「昨夜まで普通に聞こえていたのに、朝起きたら左耳だけ音が遠くなっていて。耳鳴りもして、何かに詰まっているような感じでした」
突発性難聴は突然発症し、多くは片耳の聴力が数時間〜数日のうちに低下します。自然に治ることもありますが、発症から72時間以内に耳鼻咽喉科を受診し治療を開始することが、聴力回復の最大のカギとされています。
※鼻づまりには塩水が良いとネット情報を鵜呑みにして、適当な塩水を作り鼻から吸引。鼻は一時的に通るも、吸引後に炎症を起こし。鼻の奥と耳の奥にある「耳管(じかん)」が塞がれてしまい、聞こえなくなるといったケースもありますので、耳鼻科への受診は必須です。
本記事では、当院で対応した症例をもとに、突発性難聴に対する鍼灸治療のアプローチと、耳鼻咽喉科との連携について解説します。
実際の症例:40代女性、起床時に左耳の聴力低下を自覚
経緯
起床時に左耳の聞こえが悪くなっていた。耳鳴りと耳がふさがった感じが続いたため、同日午前中に耳鼻咽喉科を受診。純音聴力検査で右耳の低音域から中音域にかけての感音性難聴を確認。突発性難聴と診断され、処方された薬の内服を開始。発症から5日後、「ステロイドと並行して血流や自律神経を整えたい」と当院へ来院。
- 主訴:左耳の聴力低下・耳鳴り(低音のこもった音)、耳のふさがり感
- 耳鼻咽喉科にて突発性難聴と診断済み(発症2日後にステロイド内服開始)
- 仕事はデスクワーク中心。発症前1〜2週間は繁忙期で睡眠不足が続いていた
- 過去にも耳鳴りが起きたことがあるが、今回は聴力低下を伴うのは初めて
来院時の状態と初期評価
来院時に視診・問診を行い、以下の所見を確認しました。
- 左耳の聴力低下(低音域から中音域)
- 左耳の耳鳴り(低音・こもった音)が持続
- 耳のふさがり感(耳閉感)が強い
- 頸部から後頭部にかけての強い筋緊張
- 睡眠の質が著しく低下(繁忙期の疲労蓄積)
- 舌の色:やや暗め、苔は薄白(気滞・血瘀傾向)
耳鼻咽喉科での診断、ステロイド治療が先行していたため、鍼灸は補完的に内耳への血流改善と自律神経の安定を目的に施術を開始しました。
突発性難聴とは
突発性難聴は、ある日突然、明らかな原因なく片耳の聴力が低下する疾患です。耳鳴り、耳閉感、めまいを伴うこともあります。
原因はまだ完全には解明されていませんが、内耳の血流障害やウイルス感染(特にヘルペスウイルスの再活性化)、ストレスや疲労による免疫低下が関与していると考えられています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な症状 | 突然の片耳の聴力低下、耳鳴り、耳閉感・(めまいを伴うこともある) |
| 好発年齢 | 40〜60代に多い(年齢を問わず発症する) |
| 発症様式 | 突然(数時間〜数日以内) |
| 主な原因 | 内耳の血流障害、ウイルス感染、ストレス、過労、睡眠不足(複合要因) |
| 標準治療 | ステロイド(内服・点滴)+安静、ビタミン剤、血管拡張薬など |
| 鍼灸での対応 | 内耳の血流改善、自律神経の安定、回復促進、後遺症(耳鳴り)ケア |
なぜ72時間以内の受診が重要なのか
突発性難聴の予後(回復のしやすさ)は、治療開始が早いほど改善率が高いことがわかっています。特に発症から72時間(3日)以内にステロイド治療を開始すると、完全回復または部分回復の可能性が高まります。
一方、発症から1週間以上が経過した場合は回復が難しくなる傾向があります。「しばらく様子を見よう」「疲れで耳が変なだけかも」と思って受診が遅れると、後遺症(耳鳴りの残存、聴力の部分的な回復不全)につながる場合があります。
「突然耳が聞こえにくくなった」と感じたら、まず当日中か翌日以内に耳鼻咽喉科を受診してください。
発症時期別の鍼灸治療アプローチ
突発性難聴への鍼灸の関わり方は、発症からの時期によって異なります。
急性期(発症〜2週間)
ステロイド治療が始まり、内耳の炎症、血流障害が続いている時期です。当院では以下の方針で施術を行いました。
①局所
耳鳴り、難聴の緩和として翳風、耳門、角孫などへ置鍼。赤外線で温めるアプローチ。耳周りの指圧、手のひらで耳をふさぐよう鼓膜にパフパフと優しく空気を送り鼓膜を振動させる。
②頸部・後頭部・肩の緊張緩和
内耳への血流は頸動脈、椎骨動脈を通じて供給されます。天柱、風池、完骨などへのアプローチで頸部の筋緊張を緩め、内耳への血流改善を促す。
③自律神経、免疫力を整えるツボへのアプローチ
ステロイドを処方されると胃が荒れる場合もあり、お腹、背中のツボを使用。炎症を鎮めるとされている合谷、曲池、肩隅などその日の体調に合わせてツボを変える。
こうやって気血の流れを整える体の自然治癒力を高めることを目的としました。難聴などはストレスや睡眠不足など、潜在的な原因も考慮して心兪、腎兪への施術もします。
回復期・後遺症期(耳鳴り・耳閉感が残る場合)
ステロイド治療が終了しても耳鳴りや聴力の部分的な低下が残存するケースがあります。
① 耳鳴り、耳閉感への継続ケア
聴力がある程度回復しても耳鳴りや耳閉感が残る場合、自律神経の不安定さや頸部の緊張が継続要因になっていることがあります。鍼灸による継続ケアで症状の軽減を図ります。
② 再発予防のための体質ケア
突発性難聴は再発することがあります。過労、睡眠不足、強いストレスが引き金になりやすいため、自律神経を整え体力、免疫力を底上げする施術を継続しました。
耳鼻咽喉科と鍼灸の役割分担
突発性難聴では、医療機関との連携が特に重要です。
- 発症直後(72時間以内):まず耳鼻咽喉科を受診。ステロイド治療の開始を最優先にしてください
- ステロイド投与開始後(発症5日〜):鍼灸を並行して行い、内耳の血流改善と回復をサポート
- 回復期・後遺症(耳鳴り・耳閉感が残る場合):鍼灸ケアを継続し、残存症状の軽減と再発予防を図る
鍼灸単独で突発性難聴の聴力を「回復させる」わけではありませんが、内耳の血流改善・自律神経の安定・免疫力向上を通じて、薬物療法との相乗効果が期待できます。
よくあるご質問
Q. 突発性難聴に気づいたらすぐ鍼灸を受けていいですか?
発症直後は、まず耳鼻咽喉科を受診してください。ステロイド治療の早期開始が予後を大きく左右します。鍼灸は医療機関での治療が始まってから、並行して行うのが理想的です。
Q. 発症からどのくらいで来院するのが効果的ですか?
ステロイド治療が始まり、ある程度落ち着いてきた発症3日〜1週間以内が理想的ですが、現実では鍼灸治療が良いと認知されておらず、中々治らないなと思い始める数か月後から半年後くらいの来院が多いです。後遺症期(治療後も耳鳴りが残っている)での対応が多いです。
Q. 耳鳴りだけが残っていますが改善できますか?
突発性難聴後の耳鳴りに対して、鍼灸は対応可能です。頸部の緊張緩和、自律神経の安定を中心に施術を行います。「もう耳鳴りは治らない」と諦める前に一度ご相談ください。
Q. 難聴が片耳だけなのに治療が必要ですか?
片耳だけでも突発性難聴は緊急性の高い疾患です。放置すると回復が難しくなります。「片耳だから大丈夫」と思わず、早期受診をおすすめします。
まとめ
突発性難聴は、発症直後の耳鼻咽喉科での適切な治療が最優先です。しかし薬だけでは回復が不十分なケースもあり、鍼灸による補完療法が内耳の血流改善・自律神経の安定、後遺症(耳鳴り)ケアに力を発揮します。
「ステロイドを飲んでいるが聴力の戻りが遅い」「治療後も耳鳴りが続いている」「再発が心配で体質改善したい」という方は、ぜひ恵比寿・鍼灸院ハリステーションへご相談ください。





コメント