症例

不眠症に鍼灸|眠れない・夜中に目が覚める・朝早く起きてしまう悩みを東洋医学で改善【鍼灸師監修】

【症例報告】寝つけない夜が続いて遅刻、注意力低下が増えた──40代女性・会社員の不眠症に鍼灸で取り組んだ例

患者:Kさん(40代・女性・会社員)
主訴:寝つきが悪い、夜中に2〜3回目が覚める、朝4〜5時に目が覚めて二度寝できない
経緯:春から担当者が変わり、八方美人な振る舞いに疲労がたまる。心配事が増えて、夜になっても仕事のことが頭から離れず眠れない状態が続いている

Kさんは在宅勤務で自分のペースで仕事をするタイプ。会社の経営者が変わり、自分の仕事と子会社との連携を同時に担うようになってから、徐々に睡眠が浅くなっていきました。横になると仕事の段取りや気になっていることが浮かんできて眠れず、眠れたとしても夜中に何度か目が覚める。朝は5時前に目が覚めて疲労感を抱えたまま出勤するという状態でした。

「睡眠薬は飲みたくない」というご希望があり、まず鍼灸を試してみたいとお越しになりました。週1〜2回、90分コースで施術を始め、2回目のさい「施術した日の夜は深く眠れた」とおっしゃいました。2ヶ月後には夜中に目が覚める頻度が週に1〜2回程度に減り、朝のだるさもかなり楽になったとのことで、現在は月1~2のペースで継続されています。


不眠症とは

日本睡眠学会「睡眠障害とは -睡眠障害の種類」

項目 内容
不眠の種類 入眠困難(なかなか眠れない)、中途覚醒(夜中に目が覚める)、早朝覚醒(朝早く目が覚めて眠れない)、熟眠障害(眠っても疲れが取れない)の4種類がある。複数が重なるケースも多い。
有病率 日本人の約20〜30%が何らかの不眠を抱えているとされる。慢性的な不眠症は約10%にのぼると言われており、特に中高年の女性、高齢者、ストレスの多い職種に多い。
主な原因 ストレスや不安(心理的要因)、交代制勤務などの生活リズムの乱れ、スマートフォンや照明による光刺激、カフェインや飲酒の習慣、うつ病や不安障害などの精神疾患、痛みや頻尿など身体的な問題。
放置するリスク 集中力、判断力、記憶力の低下。免疫機能の低下。高血圧、糖尿病、うつ病との関連も指摘されている。慢性化するほど改善に時間がかかる。
一般的な治療 睡眠衛生指導(生活習慣の改善)、認知行動療法(CBT-I)、睡眠薬(ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系、メラトニン受容体作動薬など)。近年は薬に頼らないアプローチが見直されている。

東洋医学から見た不眠症

東洋医学では、眠れない状態を「心神不安(しんしんふあん)」として捉えます。「心(しん)」は現代でいう心臓の機能だけでなく、精神活動や意識全般をつかさどる臓器として考えます。この「心」が不安定になると、夜になっても気持ちが静まらず、眠れなくなるというわけです。

不眠のタイプによって原因となる臓腑の状態が異なります。たとえば、寝つきが悪くて考えすぎてしまうタイプは「肝気鬱結(かんきうっけつ)」、夜中に目が覚めてしまうタイプは「心腎不交(しんじんふこう)」、眠っても疲れが取れないタイプは「心脾両虚(しんぴりょうきょ)」と分類され、それぞれ使うツボが変わります。


当院の不眠症への治療アプローチ

① 自律神経のアンバランスを整える

不眠の多くは、交感神経が夜になっても優位のままで、副交感神経への切り替えがうまくいかないことが原因です。鍼灸刺激は副交感神経を優位にする作用があり、施術後に「体が重くなる」「眠くなる」という感覚を感じる方が多いです。

背中が辛いを良く訴えてました。緊張が続くと寝ているときにやたら汗をかくようになってきます。

② 「心」と「肝」を整えるツボ

巨闕(こけつ)、内関(ないかん)、百会(ひゃくえ)、三陰交(さんいんこう)など、精神安定と睡眠に関係の深いツボを中心に使います。特には巨闕(こけつ)」というツボは胃の不調(胃もたれや吐き気など)や精神的なストレス(胸のつかえやイライラ)を和らげる効果があります。

コルチゾールを下げるツボとして、印堂(いんどう)、内関(ないかん)もマストです。自分でトントンと指で刺激しても良いです。

③ 不眠タイプに合わせた個別対応

初回にしっかりとお話を聞いた上で、「眠れないパターン」が入眠困難なのか、中途覚醒なのか、早朝覚醒なのかを確認し、東洋医学的なタイプ判断(弁証)を行います。同じ「眠れない」でも原因が違えばアプローチも変わります。

④ 施術後のセルフケアもお伝えします

就寝前の過ごし方、スマートフォンとの距離感、お灸のセルフケア(三陰交や湧泉へのコメ粒灸)など、自宅でできることをあわせてお伝えします。週に何度も来られない方でも、日常の中で睡眠の質を上げていけるようサポートします。


心療内科、精神科との連携について

不眠が2〜3週間以上続いている場合、まず心療内科や精神科を受診することをお勧めします。うつ病や不安障害が背景にある場合は、専門的な診断と治療が必要です。また、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が不眠の原因になっているケースもあり、これは内科や耳鼻咽喉科での検査が必要です。

鍼灸は、睡眠薬や抗不安薬を服用中でも安全に併用できます。「薬の量を減らしていきたい」という方が鍼灸を取り入れるケースが多いですが、減薬は必ず主治医と相談した上で進めてください。

次のような状態の場合は、まず医療機関を受診してください。

  • 強い気分の落ち込みや希死念慮がある
  • 日常生活が送れないほど眠れない状態が続いている
  • いびきが激しく、昼間の強い眠気がある(睡眠時無呼吸症候群の疑い)
  • 最近始めた薬が原因で眠れなくなった可能性がある

よくあるご質問

Q. 鍼灸で本当に眠れるようになりますか?

A. 「施術した夜はよく眠れた」とおっしゃる方は多いです。1回で変化を感じる方もいれば、数回かけて徐々に睡眠が深くなっていく方もいます。睡眠薬のように即効性はありませんが、体質から整えていく効果が期待できます。

Q. 睡眠薬を飲んでいますが、一緒に受けられますか?

A. 問題ありません。薬との相互作用もないため、服薬中でも安心して受けていただけます。「将来的には薬に頼らずに眠れるようになりたい」という目標に向けて一緒に取り組むことができます。

Q. 不眠が何年も続いています。今からでも改善しますか?

A. 慢性化した不眠は改善に時間がかかることがありますが、体質を整えることで少しずつ眠りやすい状態に近づけることは可能です。「以前よりも少し眠れるようになった」という積み重ねが大切ですので、焦らず続けることが重要です。

Q. 何回通えばよいですか?

A. 最初は週1〜2回を目安にお越しいただき、変化を確認しながらペースを調整します。改善してきたら隔週、月1回というように間隔を空けていきます。


まとめ:不眠症と鍼灸

  • 鍼灸は自律神経に直接働きかけ、副交感神経を優位にすることで眠りやすい体の状態を作ります。
  • 東洋医学では「眠れないパターン」によってアプローチを変えるため、同じ不眠でも個別の対応が可能です。
  • 睡眠薬との併用も安全で、「薬を減らしていきたい」という方にも対応できます。
  • 不眠が2週間以上続く場合は、心療内科での受診を優先してください。鍼灸はその治療と並行して取り入れることができます。

「なかなか眠れない」「夜中に何度も目が覚める」「朝から疲れている」という状態が続いているなら、一度ご相談ください。

恵比寿鍼灸院ハリステーションでは、不眠症の鍼灸相談を随時承っています。

廣木 孝志

廣木 孝志

2022年11月、恵比寿で個室鍼灸院を開業/痛みの緩和、全身調整が得意/セルフケア提案とコンディショニングを大切にしています。

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