「膝の上が痛いんです。でも、登っているときは気づかないんですよ」——毎週のように山に登られている40代女性の言葉です。この一言に、登山でよくある痛みの正体が詰まっています。
ご来院時の状態
- 40代・女性(月2〜4回、多いときは毎週の登山。日帰りから山小屋泊まで/荷物は13〜16kg)
- 膝のお皿の上あたりが痛む
- 登っている最中は気づかない。下山後や翌日に感じる
- 太ももの外側(外側広筋)が硬く、ハムストリング・ふくらはぎも張っていた
- 前シーズンには股関節とお尻の痛み、足底の痛みが出た時期もあった
なぜ「登っているとき」は気づかないのか
山にいる間は、集中しています。景色があり、足場の判断があり、時間の計算がある。体はサインを出していても、脳がそれを拾わない状態です。
そして下山して、車や電車に座って、家に着いて——動きが止まったときに痛みが表に出ます。「登っているときは平気だった」からこそ、本人は原因を登山と結びつけにくい。ここが厄介なところです。
なぜ膝の「上」なのか
膝のお皿の上には、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)がつながっています。この筋肉は、登りよりも下りで強く使われます。
下山では、一歩ごとに体重と荷物の重さを受け止めながら、膝をゆっくり曲げていきます。筋肉は伸ばされながら力を出し続ける——これは筋肉にとって、いちばん負担の大きい使い方です。
荷物が13〜16kgとなれば、その分だけ負担も増えます。「登りで疲れて、下りで痛める」のが、膝の上の痛みの典型です。
当院の見立て
腰の可動域を確認してから、片足に重心をかけてもらいます。調子が良い時はつま先と膝がしらの向きが揃いますが、山登りをした後では、膝が内側に入り込んでしまう『ニーイン』が見られました。
触診では、太ももの外側の張りが強く、お尻からハムストリング、ふくらはぎまで硬さが続いていました。まず荷物の重さは背中と下半身に集まります。
*関節の大きな役割は、骨と骨をつなぎ、体をスムーズに動かすことです。人体の関節は、大きく「動かす(モビリティ)」役割と「安定させる(スタビリティ)」役割の2つに分かれており、これらが交互に連動して機能しています。
股関節と足首(モビリティ)が固まると、安定させるはずの膝に動きを求めることがあります。今回の症状は、膝だけの問題ではなく、脚(股関節、足首)全体で体重を支えきれずに、膝に負担が集まった状態と考えました。
これは当院の考えですが、お腹の冷えは背中を丸めます。すると首肩の緊張も起こりやすくなります。山では前傾姿勢と重い荷物が続くため、下半身だけでなく背中や首にも疲れが溜まります。
施術内容
うつ伏せからスタートして、首から背中、お尻・ハムストリング・ふくらはぎにパルス(低周波)を使い、脚の後ろ側をまとめて緩めました。仰向けになってもらい、膝の周りへの施術に加えて、太ももの外側の張りも重点的にアプローチします。
首肩を整えつつお腹は温める。登山は全身を使うので、脚だけ診ても足りません。登山時の痛みが出たときの対処法、再発予防をお伝えして終了。
施術後は「軽くなった」と話され、その場で歩き方の軽さを実感されていました。
経過:シーズンを通して整える
この方は登山が本格化してから、山行の合間にメンテナンスを入れる形で通われています。
- 前シーズンに出た股関節・お尻の痛みは、その後落ち着いて再発していない
- 足底の痛みが出た時期も、経過を追ううちに訴えがなくなった
- 今シーズンは膝の上に出たが、翌週の山行には支障なく行けている
痛みが出るたびに部位は変わりますが、「行けなくなる」ところまでは至っていない——これが継続してケアしている方の経過だと考えています。
登る方へのセルフケア
- ふくらはぎを下から上へさする:強く揉まなくて構いません。帰宅後の入浴時に
- 荷物を見直す:13kgと10kgでは、下山時の膝への負担がはっきり違います
- 足三里にお灸:膝のお皿の外側から指4本分下。脚の疲れに使われてきたツボです
- テーピングを覚える:サポーターと違って蒸れずに手軽に痛む場所をサポートしてくれます。
なお、膝が腫れる、水がたまる、階段の下りで力が抜ける、歩けないほど痛むといった場合は、すぐにでも整形外科を受診してください。半月板や靭帯、腸脛靭帯炎など、鍼灸だけでは対応しきれない状態のこともあります。
恵比寿鍼灸院ハリステーションでは、完全個室でお一人ずつ施術しています。山を続けたい方の、シーズンを通したメンテナンスもご相談ください。ご予約・ご相談はLINEまたはWEBから承っております。



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