症例

低血圧に鍼灸|水分や塩分を摂っても改善しない方へ東洋医学からのアプローチ【鍼灸師監修】

【症例報告】水分と塩分を摂っているのに改善しない──46歳女性、やせ型で運動習慣もある低血圧

患者:Mさん(46歳・女性)
主訴:めまい、立ちくらみ、朝起きるのがつらい、倦怠感
血圧:上80、下50程度
経緯:細身でやせ型の体型。日常的に運動も行っているが、健康診断で低血圧を指摘され、内科で「水分と塩分をしっかり摂るように」と指導を受けた

Mさんは体型管理にも気を遣っていて、運動不足というわけではありませんでした。病院での指導を受けて、塩こうじを使った料理を毎日の食事に取り入れるなど、塩分摂取の工夫をされていました。一方で、お茶やコーヒーを習慣的に飲んでおり、カフェインには利尿作用があるため、せっかく摂った水分や塩分が排出されやすい状態になっていました。「言われた通りにしているのに、なぜ改善しないのか」というご相談で来院されました。

当院では、塩分や水分の摂取量だけでなく、それを体に取り込み、巡らせる力そのものに着目しました。週1回のペースで施術を開始し、1ヶ月ほどで「朝起きたときのめまいが減った」というご報告があり、3ヶ月後には立ちくらみの頻度も減少しました。体質的な部分が大きいため、運動習慣と並行して経過を見ながら、現在も施術を続けています。


低血圧とは

項目 内容
低血圧の基準 明確な定義は国によって異なるが、収縮期血圧(上の血圧)が100mmHg未満を一つの目安とすることが多い。高血圧と違い、低血圧には薬による厳密な治療基準が定められていない。
主な種類 本態性低血圧(体質的なもので、やせ型の女性に多い)、症候性低血圧(ほかの病気が原因で起こる)、起立性低血圧(立ち上がったときに血圧が急に下がる)。
主な症状 めまい、立ちくらみ、倦怠感、朝起きられない、頭痛、冷え、肩こり、集中力の低下など。症状の感じ方は個人差が大きい。
食事指導の落とし穴 水分、塩分の摂取を勧められることが多いが、カフェインを含む飲み物には利尿作用があり、摂った水分が排出されやすくなる。塩分を摂っていても、消化吸収の働きが落ちていると体に十分取り込めないこともある。
一般的な治療 生活指導(水分、塩分摂取、十分な睡眠)、弾性ストッキングの使用、起立時にゆっくり動く習慣づけ。症状が重い場合は昇圧薬が処方されることもある。

東洋医学から見た低血圧

東洋医学では、低血圧の背景にあるような状態を「気虚(ききょ)」「陽虚(ようきょ)」として捉えます。「気」は全身に血や水分を巡らせる推進力のようなものですが、これが不足すると、立ち上がったときや朝方に十分な力が働かず、めまいや立ちくらみが起こりやすくなります。

やせ型で運動量が多い方の場合、エネルギーの消耗が大きく、「気」を補う力がそれに追いつかないことがあります。塩分や水分を摂っていても、消化吸収を担う「脾(ひ)」の働きが弱っていると、せっかく摂った栄養を全身に運ぶ力が足りず、症状が改善しにくいと考えます。


当院の低血圧への治療アプローチ

① 気を補うツボの使用

足三里(あしさんり)、関元(かんげん)、気海(きかい)など、気を補う代表的なツボを使い、全身の推進力そのものを高めることを目指します。これは塩分や水分を「摂る」こととは別に、「巡らせる」力を育てるアプローチです。

② 消化吸収の働きを高める

お腹のツボを使い、脾胃(ひい)の働きを整えます。塩こうじなどで塩分を意識的に摂っていても、消化吸収の機能が落ちていると体に取り込みにくいことがあるため、内臓の働きそのものを高めるアプローチを行います。

③ お灸による温熱刺激

「陽(よう)」の不足が見られる方には、お灸で体を温め、巡りを促します。冷えを伴う低血圧の方には特に効果を感じやすい施術です。

④ 自律神経の調整

立ち上がったときに血圧が下がりやすい起立性低血圧の傾向がある方には、自律神経の切り替えをスムーズにするツボも組み合わせます。


内科との連携について

低血圧自体は重大な病気ではないことが多いですが、何らかの病気が背景にある症候性低血圧の可能性もあるため、まずは内科で一度検査を受けることをお勧めします。貧血やホルモンの異常、心臓の問題などが隠れている場合もあるためです。

検査で特に問題がなく、体質的な低血圧と判断された場合は、生活指導と並行して鍼灸を取り入れることができます。すでに昇圧薬などを処方されている方も、薬と並行して受けていただけます。

次のような場合は、医療機関を受診してください。

  • めまいに伴って意識が飛びそうになる、実際に倒れたことがある
  • 急激に症状が悪化した、または急激な体重の変化がある
  • 胸の痛みや強い動悸を伴う
  • 顔色が悪く、唇や爪の色も悪い状態が続いている

よくあるご質問

Q. 病院で言われた通り水分や塩分を摂っているのに血圧が上がりません。

A. 摂取量だけでなく、体に取り込み、巡らせる力も重要です。お茶やコーヒーなどカフェインを含む飲み物は利尿作用があるため、せっかく摂った水分が排出されやすくなります。まずは水分の種類を見直すことと、消化吸収の働きを整えることを並行して行うとよいでしょう。

Q. 運動をしているのに低血圧なのはなぜですか?

A. 運動不足が低血圧の原因とは限りません。やせ型で運動量が多い方は、エネルギーの消耗が大きく、それを補う力が追いついていないケースがあります。運動量と栄養、休息のバランスを見直すことも大切です。

Q. お茶やコーヒーはやめた方がいいですか?

A. 完全にやめる必要はありませんが、飲む量やタイミングを見直すことをお勧めします。水分補給の中心は、カフェインを含まない水やお茶(麦茶など)に置き換えるとよいでしょう。

Q. 何回くらいで変化が出ますか?

A. 体質的な低血圧は改善に時間がかかることが多く、週1回のペースで1〜2ヶ月続けていただくと変化を感じる方が多いです。焦らず継続していただくことが大切です。


まとめ:低血圧と鍼灸

  • 低血圧は水分、塩分の摂取量だけでなく、それを体に取り込み巡らせる力も関係しています。
  • 鍼灸は気を補うツボや消化吸収の働きを整えるツボを使い、体質そのものからのアプローチを行います。
  • カフェインを含む飲み物の利尿作用など、生活習慣の見直しも症状改善には重要です。
  • 症状が重い場合や急激な変化がある場合は、まず内科を受診してください。

「水分や塩分を摂っているのに低血圧が改善しない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。

恵比寿鍼灸院ハリステーションでは、低血圧の鍼灸相談を随時承っています。

廣木 孝志

廣木 孝志

2022年11月、恵比寿で個室鍼灸院を開業/痛みの緩和、全身調整が得意/セルフケア提案とコンディショニングを大切にしています。

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