症例:会社員Yさん(30代・女性)の鼻づまり、頭重感
主訴:幼少期から慢性的な鼻づまりが続き、天気が崩れると頭が重くてすっきりしない。
経緯:6月上旬に風邪をひき、症状は治ったはずなのに鼻づまりだけが3週間以上続いていたYさん。耳鼻咽喉科を受診し抗生剤や点鼻薬で治療を受けました。薬を飲んでいる間は多少楽になるものの、治療が終わると鼻づまりと頭重感がぶり返す状態が続いていたため、当院にご相談いただきました。
来院時、Yさんは「匂いが分かりにくい」「夜に口呼吸になって熟睡できない」「のどに鼻水が下りてくる感じ(後鼻漏)が不快」とのお悩みも抱えていました。
当院での所見
問診と触診で、Yさんの首から肩にかけて強いこわばりがあり、後頭部から首にかけての筋肉が硬く緊張していることが分かりました。また、デスクワーク中心の生活で気温や気圧の変化に敏感になりやすく、自律神経のバランスが乱れている様子もうかがえました。鼻の粘膜の腫れそのものは耳鼻咽喉科での治療で落ち着いてきていましたが、首肩の緊張や自律神経の乱れが、鼻づまりや頭重感を長引かせる一因になっていると考えられました。
このような首肩の緊張からくる頭重感は、緊張型頭痛と似た仕組みで起こることもあります。慢性的な頭痛にお悩みの方は頭痛、片頭痛に鍼灸の記事もご参考ください。
副鼻腔炎とは
副鼻腔炎について、一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は次のように説明しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 概要 | 鼻の周りにある4つの空間(上顎洞、篩骨洞、前頭洞、蝶形骨洞)で炎症が起きている状態。以前は「蓄膿症」と呼ばれていた。 |
| 急性期の症状 | 鼻づまり、ドロっとした匂いのする鼻汁、頬や鼻周囲、額の痛み、顔やまぶたの腫れ、発熱など。 |
| 慢性化したときの症状 | 鼻づまり、粘性の鼻汁、頭重感、匂いが分かりにくいなどの症状が続く。 |
| 受診の目安 | 鼻の症状、とくに長引く症状が気になる場合はまず耳鼻咽喉科を受診することがすすめられている。 |
出典:一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「鼻の病気|副鼻腔炎」
東洋医学から見た副鼻腔炎
東洋医学では、鼻づまりやドロッとした鼻水が続く状態を「鼻淵(びえん)」と呼び、いくつかのタイプに分けて考えます。
- 風熱犯肺(ふうねつはんはい):かぜなどの外邪が肺に影響し、鼻の粘膜に熱がこもって炎症が起こりやすくなるタイプ。鼻づまりや黄色く粘った鼻水が出やすいのが特徴です。
- 脾虚湿盛(ひきょしっせい):胃腸の働き(脾)が弱く、体内に余分な水分(湿)がたまりやすいタイプ。鼻水や後鼻漏が長引き、頭が重く、だるさを感じやすくなります。
- 肝鬱気滞(かんうつきたい):ストレスや緊張により気の巡りが滞り、自律神経のバランスが乱れて鼻の粘膜の血流が悪くなるタイプ。気圧の変化やストレスで症状が悪化しやすいのが特徴です。
Yさんの場合は、デスクワークによる首肩の緊張とストレスから「肝鬱気滞」の要素が強く、そこに胃腸の弱さによる「脾虚湿盛」が重なっている状態と考えられました。
当院の治療アプローチ
①自律神経を整える全身調整
首肩の緊張をゆるめ、自律神経のバランスを整えることで、鼻の粘膜の血流やリンパの流れを促します。うつ伏せの施術ですと、後鼻漏、鼻をすする場面が見られたので横向きで施術しました。
②鼻づまりに対する局所のツボ
迎香(げいこう、小鼻の脇)、印堂(いんどう、眉間)、上星(じょうせい、額の中央)、合谷(ごうこく、手の甲)など、鼻の通りを助けるツボを用います。
③体質に合わせた弁証施術
風熱犯肺、脾虚湿盛、肝鬱気滞など、Yさんのタイプに合わせてツボや施術内容を調整します。胃腸の働きを助けるツボや、ストレスを緩和するツボを組み合わせることもあります。
④ご自宅でできるセルフケア
蒸しタオルで鼻周りを温める、首肩のストレッチを行うなどのセルフケアもおすすめしています。花粉症やアレルギー性鼻炎でお悩みの方向けに花粉症、アレルギー性鼻炎に鍼灸でもセルフケアの工夫をご紹介していますので、鼻づまり全般のケアに参考にしていただけます。
耳鼻咽喉科との連携について
鍼灸は副鼻腔炎そのものを治療するものではありません。細菌感染やポリープ、好酸球性副鼻腔炎などが疑われる場合は、耳鼻咽喉科での検査と治療が必要です。鍼灸はあくまで、治療と並行して自律神経や血流を整え、症状の緩和をサポートする位置づけとしてご利用ください。
次のような症状がある場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診してください。
- 38度以上の高熱が続く
- 顔やまぶたが強く腫れる、激しい痛みがある
- 視力の異常を感じる
- 悪臭の強い鼻汁や血が混じった鼻水が続く
- 症状が片側だけに強く出ている
よくあるご質問
Q. 耳鼻咽喉科の治療と並行して鍼灸を受けても大丈夫ですか?
A. はい、問題ありません。薬による治療と並行して、自律神経や血流を整えるケアとして鍼灸をご利用いただけます。
以前、医師の患者さんから「耳鼻科で処方される抗生剤は強いものが多いため、抗生剤に対して耐性ができやすくなる」と伺ったことがあるので、慢性的な副鼻腔炎で薬を飲み続けてきた人にこそ、鍼灸治療はお役に立てるかと思われます。
Q. どのくらいの頻度で通えばいいですか?
A. 症状が強い時期は週1回程度、落ち着いてきたら2〜3週に1回など、症状や体調に合わせてご提案しています。
Q. 鼻に直接針を刺すのですか?
A. いいえ。顔や首、手足のツボを中心に施術しますので、鼻の中に針を刺すことはありません。
Q. 慢性副鼻腔炎と診断されていますが施術を受けられますか?
A. 可能です。ただし好酸球性副鼻腔炎(指定難病)など治療方針が専門的になるケースもありますので、主治医の診断、治療方針を踏まえたうえでご相談ください。あくまでも治癒ではなく緩和のお手伝いとなります。
まとめ:副鼻腔炎と鍼灸
- 副鼻腔炎は副鼻腔の炎症で、慢性化すると鼻づまりや頭重感、匂いが分かりにくいなどの症状が続く
- 東洋医学では風熱犯肺、脾虚湿盛、肝鬱気滞などのタイプに分けて考える
- 当院では自律神経の調整と局所のツボ施術を組み合わせ、体質に応じたアプローチを行う
- 耳鼻咽喉科での治療と並行して受けることができ、症状緩和のサポートとして活用できる
梅雨明けの気圧変化や夏のクーラーによる乾燥で、鼻づまりや頭重感が悪化しやすい時期です。治療を受けてもすっきりしない症状にお悩みの方は、恵比寿、渋谷の鍼灸院ハリステーションへお気軽にご相談ください。





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