【症例報告】帯状疱疹が治ったのに痛みだけが残ってしまった──60代女性の帯状疱疹後神経痛に鍼灸で取り組んだ例
患者:Kさん(64歳・女性・主婦)
主訴:右胸部から背中にかけての持続する灼熱感、ピリピリとした電気が走るような痛み
経緯:4ヶ月前に帯状疱疹を発症、皮膚科で抗ウイルス薬を投与し皮疹は治癒したが、その後も痛みが続いている
Kさんが来院されたのは、「ひと通り薬を飲んで皮疹は治まったのに、ずっとズキズキした痛みが消えない」という状態が続いて4ヶ月が経ったころでした。常に衣服が触れるだけで痛く、夜も眠れない日があるとのことで、ペインクリニックでも薬を処方されていましたが、なかなか改善しないということでお越しになりました。
当院では週2回のペースで鍼灸治療を行いました。3週目には「夜の痛みが少し楽になってきた」とのご報告があり、6週目には睡眠が取れるようになり、日常生活の質が大きく改善しました。2ヶ月後には痛みが出る頻度が半分以下に減り、現在は月1〜2回のペースでメンテナンスを続けています。
又、30代の女性で『ピリピリとした腰痛』という来院理由から病院を受診させたところ帯状疱疹だったこともあります。
帯状疱疹後神経痛は治療が難しいとされていますが、鍼灸は痛みのコントロールに優れております。以下、西洋医学の知識と合わせて詳しく解説します。
帯状疱疹後神経痛とは
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 原因 | 子どものころに感染した水痘(水ぼうそう)ウイルス(VZV)が脊髄神経節に潜伏し、加齢や免疫低下をきっかけに再活性化する。帯状疱疹として発症した後、皮疹が消えても神経が傷ついたまま痛みが残るのが帯状疱疹後神経痛(PHN)。 |
| 発症率 | 帯状疱疹患者の約20〜30%に後神経痛が残ると言われる。50歳以上、特に70歳以上で発症率が高くなる。 |
| 主な症状 | ヒリヒリ、ピリピリ、ズキズキとした持続痛。衣服が触れるだけで激痛が走る「アロディニア(異痛症)」、電気が走るような痛みが出ることもある。 |
| 好発部位 | 胸部、背中、顔面(三叉神経領域)、腰部など。片側に帯状に出ることが特徴。 |
| 治療の難しさ | 神経そのものが傷ついているため、一般的な鎮痛薬が効きにくい。治療には時間がかかることが多く、慢性化しやすい。 |
| 一般的な治療 | 神経障害性疼痛に対応した薬(プレガバリン、三環系抗うつ薬、オピオイドなど)、神経ブロック注射、ペインクリニックでの集学的治療。 |
東洋医学から見た帯状疱疹後神経痛
東洋医学では帯状疱疹を「蛇丹(じゃたん)」または「缠腰火丹(てんようかたん)」と呼び、体内の「湿熱(しつねつ)」と「肝火(かんか)」が暴れた状態として説明します。帯状疱疹後に痛みが残る状態は、炎症が収まった後も「気血の流れが滞った(瘀血、気滞)」ことで痛みが慢性化しているとみなします。
特に高齢者では「腎精(じんせい)の不足」が背景にあることが多く、免疫力が低下して神経の回復力が落ちた状態が続きやすいと考えます。鍼灸では、気血の流れを再び整え、神経の回復を促すことを目指します。
当院の帯状疱疹後神経痛への治療アプローチ
① 局所への鍼治療(神経の興奮を落ち着かせる)
神経痛と鍼灸の相性は良く、痛みが出ている部位の皮膚、皮下に細い鍼を刺激します。痛みの出ている皮膚分節(デルマトーム)に沿ったツボを選び、過剰に興奮している神経の状態を落ち着かせることを目的にします。直接触れることが困難な場合は、周辺や対側(反対側)への刺激から始めます。
② 遠隔ツボで全身の気血を動かす
合谷(ごうこく)、太衝(たいしょう)、足三里(あしさんり)、三陰交(さんいんこう)など、全身の気血を動かすツボを使い、瘀血(おけつ)状態を解消します。これにより痛み物質の代謝が促され、慢性的な神経痛の緩和につながります。
③ 灸(きゅう)による温熱刺激
帯状疱疹後神経痛では「冷えると痛みが増す」という方も多く、灸の温熱が神経痛の緩和に有効なケースがあります。ただし皮膚がデリケートになっている時期や部位には使用しないこともありますが、当院では積極的にもぐさのお灸、火傷しない越石式灸法を活用します。
④ 睡眠と自律神経へのアプローチ
慢性的な痛みは睡眠の質を下げ、睡眠不足がさらに痛みを悪化させる悪循環を起こします。自律神経を整えるツボを組み合わせることで、痛みの感じ方そのものを和らげる効果も期待できます。
ペインクリニック、皮膚科との連携について
帯状疱疹後神経痛は、まずペインクリニックや皮膚科での診断と治療を優先してください。適切な薬物治療(プレガバリンなど)や神経ブロック注射が、鍼灸と並行して行われることで、より高い痛みのコントロールが期待できます。
鍼灸は薬や神経ブロックを中止せずに、そのままの状態で併用できます。「ペインクリニックに通っているが効果が頭打ちになってきた」「薬の副作用が気になる」という方が鍼灸を加える選択をされるケースが多いです。
次のような場合は必ず医療機関を受診してください。
- 皮疹がまだ残っている、または新たな発疹が出た場合
- 目の周りや耳に症状が出た場合(角膜炎、ラムゼイハント症候群の可能性)
- 高熱、頭痛、意識の混濁がある場合
- 痛みが突然激しくなった場合
よくあるご質問
Q. 帯状疱疹後神経痛に鍼灸は効きますか?
A. 効果が出る方とそうでない方がいますが、「他の治療で限界を感じていた方が鍼灸を加えて楽になった」という例は少なくありません。痛みが出てから時間が経つほど神経の変化が固定しやすいため、早めに試すことをお勧めします。
Q. 鍼を刺すとき、患部に直接触れますか?
A. 状態を見ながら判断します。皮膚の感覚が過敏な方には、患部を避けた周辺や遠隔のツボから始め、徐々に範囲を広げていきます。無理に患部に触れることはしません。
Q. 何回通えば変化が出ますか?
A. 帯状疱疹後神経痛は慢性的な神経の問題なので、効果が出るまでに時間がかかることがあります。週2回で1〜2ヶ月を目安に、変化が出るか確認しながら進めます。
Q. 帯状疱疹そのものが出ているときも来られますか?
A. 発症直後の急性期(皮疹がある時期)は皮膚科での抗ウイルス薬治療が最優先です。皮疹が落ち着いてきた段階から、後神経痛の予防や痛みの軽減を目的に鍼灸を開始することをお勧めします。
まとめ:帯状疱疹後神経痛と鍼灸
- 帯状疱疹後神経痛は神経が傷ついたことによる慢性痛で、薬だけでは改善が難しいケースも少なくありません。
- 鍼灸は神経の興奮を落ち着かせ、気血の滞りを解消することで、薬との相乗効果が期待できます。
- ペインクリニックや皮膚科の治療を続けながら、並行して鍼灸を取り入れることが可能です。
- 早めに始めるほど神経の回復を助けやすいため、痛みが残っていると感じたら早期にご相談ください。
「帯状疱疹は治ったのに痛みだけが続いている」とお悩みの方は、一度ご相談ください。
恵比寿鍼灸院ハリステーションでは、帯状疱疹後神経痛の鍼灸相談を承っています。





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