「整体にもピラティスにも通いました。そのときは楽になるんです。でも、2〜3日で元に戻ってしまう」
30代の女性会社員の方が、そう話してくださいました。首と肩のこりが2か月前から強くなり、夜は痛みで何度も目が覚める。痛み止めに頼る日が続いていましたが、薬が体に合わずつらい。仕事柄、海外へ行く機会が多く、長時間のフライトがすぐ先に控えている――「飛行機に乗る前に、なんとかしたい」と、初めての鍼灸を選ばれました。
首肩こりが「何をしてもすぐ戻る」ときに起きていること
肩こりは、筋肉が縮んだまま休めない状態
同じ姿勢が続くと、首や肩の筋肉は縮んだまま働き続けます。筋肉がかたいままだと血の巡りが滞り、疲れが抜けにくくなる。これが一般に「こり」と呼ばれる状態です。もみほぐしやストレッチでいったんゆるんでも、縮ませている原因がそのままなら、筋肉はまた同じ形に戻っていきます。
首と肩だけをほぐしても戻りやすい理由
腕を上げるとき、動いているのは腕だけではありません。肩甲骨も一緒に回りながら、腕の動きを支えています(肩甲上腕リズムと呼ばれるしくみです)。肩甲骨の動きが小さくなると、そのぶん首や肩の筋肉ががんばり続けることになります。
この方の場合、首肩のほかに気になったのが下半身でした。移動の疲れで脚まわりがかなりかたく、脚を組む癖もありました。土台の骨盤や股関節が片寄ったままだと、その上に乗る背中・首・肩はバランスをとるために緊張し続けます。首肩だけをほぐしても2〜3日で戻ってしまうのは、こうした土台が変わっていないからではないかと考えました。
あわせて、食いしばりの傾向があると言われていたこと、痛みで夜に5回ほど目が覚めていたことも伺いました。歯をかみしめる筋肉は首の筋肉ともつながっており、眠りが浅い日が続けば、筋肉が休む時間も足りなくなります。
初めての鍼灸、実際にどう施術したか
仰向けで、手足のツボにお灸から
初めての鍼ということもあり、仰向けで、刺激のやさしいところから始めました。足三里・曲池・内関・三陰交にお灸。これは妊婦さんにも使われるほど優しい刺激でリラックスを促します。
この方は、お腹だけは鍼は怖いと正直におっしゃってくださったので、お灸で温めるだけにしました。当院のお灸は越石式灸法でお顔にも据えることのできる火傷しない優しいお灸です。
うつ伏せで、股関節と下半身を整える
うつ伏せになっていただき、股関節まわりを整体でゆるめ、お尻から脚にかけては鍼を刺して置いておく「置鍼」をしました。旅の疲れでかたくなっていた下半身から整えていきます。東洋医学的には、脾臓由来、腎臓由来の足のむくみも見ていきます。
最後に首肩へ、パルス(低周波鍼通電)
土台を整えたあとで、首と肩に鍼を刺し、微弱な電気を流すパルスを行いました。ストレートネックでしたので初めの方は枕の位置が定まらず何度もポジショニングをしていましたが、それも織り込み済みで首が緩むにつれて、枕の位置も安定してきました。
天柱、風池、百労、肩外兪、肩ぐうでパルス。

施術後の変化
施術前のつらさを10とすると、施術後はご本人の評価で5に。出発前にもう一度来院のご予定です。
自分でもできる、肩がこりにくいセルフケア
施術のあと、肩甲骨と腕がどう一緒に動くかを実際に動かしながらお伝えし、肩がこりにくい姿勢をご自分で確かめていただきました。
腕を使う前に、肩甲骨の位置を確かめる
パソコン作業やスマホの前に、肩をすくめて力を入れ、ストンと落とします。肩が耳から離れた位置が「こりにくい位置」の目安です。この位置のまま腕を使うと、首肩の筋肉ががんばりすぎずにすみます。
脚を組みたくなったら、両足の裏を床に
脚を組む癖は、気づいたときに直すだけで十分です。両足の裏を床につけ、座骨(お尻の骨)に体重を均等に乗せます。
長時間の移動中は、こまめに足首を回す
飛行機や新幹線では、同じ姿勢が何時間も続きます。ときどき足首を回し、下半身を固めたままにしないことが、首肩を守ることにもつながると考えています。
毎回、同じ担当が施術することの良さ
この方が当院を選んだ理由のひとつが「担当が毎回同じ」ということでした。当院は、毎回同じ鍼灸師が施術します。
「すぐ戻る」こりでは、前回の施術のあと何日もったか、どこから戻ってきたかが大事な手がかりになります。同じ担当なら、前回の体の状態と比べながら、刺激の強さや施術の順番を調整できます。体の話を毎回最初から説明し直す必要もありません。
再発を防ぐ視点
この方の首肩こりが繰り返していたのは、首肩そのものより、移動続きでかたくなった下半身や、脚を組む癖、眠りの浅さが重なっていたからだと考えています。東洋医学では、疲れが抜けにくいときは手足やお腹を温め、体の土台から整えることを大切にします。首肩の外側だけでなく、体の内側から整える考え方は繰り返す痛みと胃腸の関係でもまとめています。
こんなときは医療機関へ
次のような症状があるときは、まず整形外科などの医療機関を受診してください。
- 手や腕のしびれ、力が入りにくい感じがある
- 転倒や事故のあとから首が痛む
- 熱を伴う首の痛み、今までにない強い頭痛がある
- 安静にしていても痛みがどんどん強くなる
※これは受診の目安であり、診断ではありません。
鍼が苦手な方へ
初めての方や鍼が不安な方は、この方のようにお灸や手で温めるところから始めることができます。お腹のように鍼を使いたくない場所があれば、遠慮なくお伝えください。鍼を使わない場所は、温めたり整体でゆるめたりして整えていきます。
よくあるご質問
Q. 痛み止めを飲んでいても、鍼灸を受けられますか?
A. 受けていただけます。飲んでいるお薬がある場合は、施術前にお知らせください。お薬の量や飲み方の調整は、処方した医師にご相談ください。
Q. 病院に通っていても、鍼灸を併用していいですか?
A. 併用されている方もいらっしゃいます。通院中の治療内容を教えていただければ、それに合わせて施術を組み立てます。
Q. 何回くらい通えばいいですか?
A. 体の状態によって異なります。最初は間隔を詰めて体の反応を確かめ、変化を見ながら間隔を広げていくのが一般的な流れです。
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