【症例報告】「電車に乗るたびにトイレが心配」——ストレス性の下痢型IBSが改善した20代男性の例
患者:当時の私です(27歳、男性、鍼灸整骨院助手時代)
主訴:朝の通勤電車で腹痛か下痢。朝礼、午後礼の度にお腹が痛くなる。
経過:小学生時代、蓄膿症の治療で抗生物質を服用。フリーターから鍼灸整骨院の助手に転職。社会人としての経験が無く、世間知らずのため、毎日のように注意されるようになり、腹痛が酷くなる。転職から数か月後に決定打があり過敏性腸症候群を発症。
ストレス①:飲食店のアルバイトなど接客業を10年経験したが、医業職ははじめてで「お客様」から「患者さん」と対応の変化に戸惑う。
ストレス②:責任ある業務のため、言葉使い、身なり、急に話し出さないなど、先輩から指導を受ける。分からないことを注意されるのは仕方がないと思いながら業務を続ける。
決定打:整骨院には13時から15時までの昼休憩があり、私は院長の許可をもらって、その時間にバタバタと行動したことで先輩から「いかがなものか」と注意を受けた。お腹がギュルルルルルルと音を立てる。
その後、注意を受けるたびに下痢になり、消化器内科で過敏性腸症候群(下痢型)と診断。院長はアットホームを重んじて毎回飲みにさそってくれたが飲食が受け付けられなくなっていたので逆効果。整腸剤と下痢止めを処方されていましたが。下痢止めは「出したい!」という体の作用を強制的にストップする効果があり、逆にしんどい思いをしました。
その後、先輩とはそういう生き物だという認識で接することで過敏性腸症候群を克服しました。心を強く持ちました。以上
身をもって体験した腹痛ですが本当にしんどかったです。当院では自律神経の調整と腸の過敏性を緩める鍼灸治療を行います。腸が整うとメンタルも整う、身体が元気だとメンタルも保てます。
私の腹痛ポイントは「抗生物質」「ピロリ菌」「対人関係のストレス」でした。
早めに起きて朝食を食べると家を出る前にトイレに行くことができます。若い方でも毎回腹痛がある方は、ピロリ菌検査をおすすめします。胃の不調を伝えることで保険適応の胃カメラや内視鏡検査を受けることができます。
以下では、過敏性腸症候群に鍼灸がどのように関わるのかを解説します。
過敏性腸症候群(IBS)とは
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定義 | 腸に炎症や潰瘍などの器質的な病変がないにもかかわらず、腹痛・腹部不快感・便通異常(下痢・便秘・交互)が慢性的に繰り返される機能性消化管疾患。日本の有病率は約10〜15%。 |
| 主な症状 | 腹痛・腹部けいれん(排便で軽快)、下痢・便秘・またはその交互、腹部膨満感・ガス、残便感、緊張や食後に症状が悪化しやすい |
| タイプ分類 | ①下痢型(男性に多い) ②便秘型(女性に多い) ③混合型 ④分類不能型 |
| 主な原因・誘因 | 精神的ストレス・不安・睡眠不足による自律神経の乱れ、腸の過敏性亢進(内臓知覚過敏)、腸内細菌叢の乱れ、感染性腸炎後(ポストインフェクシャスIBS) |
| 診断 | Rome IV基準:過去3ヶ月で月3日以上の腹痛が繰り返し起こり、排便との関連・排便頻度や形状の変化を伴う |
| 一般的な治療 | 生活習慣指導、食事療法(低FODMAP食など)、薬物療法(整腸剤・止痢薬・下剤・抗コリン薬・抗不安薬など)、認知行動療法 |
参考:過敏性腸症候群(IBS)ガイドライン|日本消化器病学会
鍼灸は過敏性腸症候群にどう効くのか
① 脳腸相関(Gut-Brain Axis)へのアプローチ
IBSの大きな特徴は「脳と腸が密接につながっている」ことです。ストレスや不安が脳に生じると、自律神経を通じて腸の動きや知覚が乱れ、腹痛・下痢・便秘が起きます。この仕組みを「脳腸相関(Gut-Brain Axis)」といいます。鍼灸は自律神経(特に副交感神経)に働きかけ、過緊張した腸の神経系を落ち着かせることが期待されています。
② 内臓知覚過敏を緩める
IBS患者さんは「ちょっとしたガスや腸の動きを強い痛みとして感じる」内臓知覚過敏の状態にあります。鍼灸の刺激は中枢神経に作用し、痛みの閾値(感じやすさ)を高める方向に働くと考えられています。お腹のツボへの鍼は直接的に腸の過敏性を和らげる効果も期待できます。
③ 東洋医学的な「脾胃(ひい)」の調整
東洋医学では消化機能を「脾胃(ひい)」が担うと考えます。ストレスが「肝(かん)」の気の流れを乱し、それが「脾胃」を傷めることで下痢や腹痛が起きる——これをIBSの典型的なパターン(「肝鬱脾虚・かんうつひきょ」)として捉えます。足三里・三陰交・天枢などのツボを使い、消化器系の気の流れを整えます。
重心とメンタルの関係
気分が落ち込む、お腹が痛いなど猫背になる時間が増えます。鍼灸治療では背中に「胃の六つ灸」という消化器官に良いとされるツボがあり、腸の経穴と合わせて施術します。
当院の過敏性腸症候群への治療アプローチ
急性期(症状が強く毎日つらい)
まず腸と自律神経の過緊張を緩めることを最優先にします。週2回の通院で、腹部・背部・下肢のツボを組み合わせて施術します。個人差がありますが、当日は「なんとなく良くなったかも」が多く、数カ月後から「少し楽になってきた」と感じ始めます。
使用するツボの例:天枢(てんすう)、足三里(あしさんり)、三陰交(さんいんこう)、太衝(たいしょう)、脾兪(ひゆ)、大腸兪(だいちょうゆ)
安定期(症状が落ち着いてきた段階)
症状が波打ちながら改善していく時期です。月2〜4回の通院を続けながら、ストレス対策、睡眠改善、食事のアドバイスを行います。職場でのストレス管理の工夫も一緒に考えます。
ストレスが多い時期の集中ケア
繁忙期、異動、転職、試験など、IBS症状が悪化しやすいイベントが事前にわかっている場合は、その前から通院頻度を上げる「先手のケア」が有効です。
消化器内科との連携
IBSの治療は、まず消化器内科での診断を受けることが大前提です。腹痛、下痢、血便などの症状は、大腸がん、潰瘍性大腸炎、クローン病など他の重篤な疾患と区別する必要があります。
特に以下の症状がある方は、速やかに消化器内科を受診してください:
- 血便・黒色便がある
- 体重が急激に減少している
- 夜中に腹痛や下痢で目が覚める
- 発熱を伴う下痢が続く
- 家族に大腸がんの既往がある
消化器内科で「IBSと診断され、薬を飲んでいるが改善しない」という方が当院には多くいらっしゃいます。薬との併用も問題ありません。
よくあるご質問
Q. 鍼灸でIBSは「治る」のですか?
A. 完全に症状がなくなる方もいれば、「つきあいながらコントロールできる」状態になる方が多いです。「毎朝トイレが不安」「外出が怖い」という状態から解放されることを目標にします。
Q. 下痢型、便秘型、混合型のどれでも対応できますか?
A. いずれのタイプも対応しています。東洋医学は「症状のパターン」よりも「その人の体質と状態」に合わせて治療するため、タイプを問わずアプローチできます。
Q. 薬(整腸剤、下痢止め)と一緒に使えますか?
A. 問題ありません。服用中の薬を継続しながら鍼灸を受けていただけます。薬を自己判断でやめる必要はなく、鍼灸と並行して進めてください。
Q. ストレスの原因がなくならないと意味がないのでは?
A. ストレスの原因をなくすことは難しくても、「ストレスに対する体の反応」を変えることは可能です。鍼灸はストレス耐性を高め、同じストレスでも腸が過剰反応しにくい体を作ることを目指します。
Q. 食事制限(低FODMAP食)も必要ですか?
A. 食事の影響が大きい方には低FODMAP食などのアドバイスもしていますが、必須ではありません。まずは鍼灸治療を試しながら、必要に応じて食事改善を取り入れていきます。
まとめ:過敏性腸症候群(IBS)と鍼灸
- 鍼灸は脳腸相関への介入、内臓知覚過敏の緩和、東洋医学的な脾胃調整の3つの柱でIBSにアプローチします。
- 消化器内科での診断・治療と並行して受けることを推奨します。
- 「薬を飲んでも根本から変わらない」「ストレスのたびに繰り返す」という方に特に向いています。
- 繁忙期など症状が悪化しやすい時期の前からケアを始める「先手の治療」が効果的です。
「通勤電車が不安」「目的地でトイレを探してしまう」「映画館では通路側の席」「大事な場面でいつもお腹が痛くなる」という方は、ぜひ一度ご相談ください。
恵比寿鍼灸院ハリステーションでは、過敏性腸症候群(IBS)の鍼灸相談を随時承っています。





コメント