朝、布団から出る一歩目がいちばん痛い
高齢の方で「寝起きに膝が痛い」「朝、立ち上がる一歩目がつらい」というご相談をよく伺います。日中はそれほどでもないのに、朝だけ、あるいは夜中にトイレへ起きたときだけ痛む。そんな訴え方をされる方が少なくありません。
痛む場所は膝の内側が多く、しばらく歩いているうちに薄れていきます。だから「歳のせい」と流されやすく、相談されないまま何年も続いていることがあります。
動き出すと楽になるのは、なぜか
眠っている間、膝はほとんど動きません。同じ角度で数時間置かれたあと、いきなり体重がかかる。それが朝の一歩目です。
当院では、動かない時間が長いほど関節まわりが固まり、そこへ荷重が加わる瞬間に痛みが出ると考えています。動き出すと軽くなるのは、動かすこと自体が巡りを促すためとみています。
裏を返せば、朝のこわばりは「膝が壊れた」という合図ではありません。動けば楽になるものは、動かせる状態にすることで変えていける余地があります。
当院が膝だけを診ない理由——股関節の硬さ
朝の膝痛でお越しになった方に、当院がまず確認するのは股関節です。
股関節が硬くなると、歩くときや立ち上がるときの動きを、膝が肩代わりします。本来なら股関節で吸収するはずのねじれや衝撃が、そのまま膝に集まる。膝そのものより、その上の関節が動いていないことが背景にあると当院では考えています。
実際の施術でも、膝まわりだけでなく、股関節やお尻の筋肉に対して時間をかけます。膝に来られた方のお尻を触るので驚かれることがありますが、こうした理由からです。
※これは当院の見立てであり、股関節の硬さが膝の痛みの原因であると断定するものではありません。
東洋医学から見た膝——腎の衰えと、二つの冷え
東洋医学では、年齢を重ねてからの膝の痛みを、腎の衰え(体を支える力の低下)と、気・血・水の巡りの滞りとして捉えます。冷えや湿気が加わると、滞りはさらに強くなると考えます。
当院が特に重く見ているのは冷えです。それも二か所あります。
ひとつは膝そのものの冷え。触れると膝の皿のまわりがひんやりしている方は少なくありません。
もうひとつが胃腸の冷えです。冷たい飲み物が習慣になっている、お腹が冷たい、食が細い。体をつくる材料をとりこむ場所が冷えていると、膝を立て直す力も届きにくくなると当院では考えています。膝の痛みでお腹を触るのは、このためです。
繰り返す不調と胃腸の関わりについては、繰り返す不調と胃腸の関係でも書いています。
お灸をどう使うか
朝のこわばりに対して、当院はお灸をよく使います。冷えが背景にあると考えているので、温めることがそのまま施術の中心になります。
膝の周りでは、犢鼻(とくび)——膝のお皿の下、外側のくぼみが定番です。ほかに鶴頂(かくちょう)、膝のお皿の下の内側と外側のくぼみ(内膝眼・外膝眼)を組み合わせます。
そして膝から離れた足三里(あしさんり)。すねの外側にあるツボで、胃腸を助けるツボとして知られています。膝の痛みに、胃腸のツボを使う。先ほどの「二つの冷え」の話が、ここで施術につながります。
お灸はご自宅でも続けられます。ご希望があれば、据える場所と、避けたほうがよい場所をお伝えしています。通院日以外に温める時間を持てるかどうかで、朝の一歩目は変わってきます。
ご自宅でできること
- 起き上がる前に、布団の中で足首を動かす。10回ほどで構いません。いきなり体重をかけないための準備です
- 股関節をゆっくり回す。膝ではなく、その上を動かします
- お風呂で膝とお腹を温める。シャワーだけの日が続くと、翌朝に出やすくなります
- 冷たい飲み物を控える。膝の話とつながらないようですが、当院は関係があるとみています
こんな場合は整形外科へ
膝が腫れて熱をもっている、水がたまっている感じがある、急に強い痛みが出た、体重をかけられない、夜間に眠れないほど痛む——こうした場合は、整形外科などの医療機関でご相談ください。関節そのものの炎症や、別の原因が隠れていることがあります。
よくあるご質問
Q. 動くと楽になるなら、放っておいてよいですか?
放っておいても悪化しないとは限りません。朝の痛みを避けようと動きが減ると、かえって固まりやすくなります。
Q. 何歳からでも変化はありますか?
年齢そのものより、動かせる範囲がどれだけ残っているかを見ています。当院では施術のあとに片足立ちを一緒に試すことがありますが、「家ではできないのに、ここではできるな」とおっしゃる方もいらっしゃいます。
Q. お灸は熱くないですか?
熱さが苦手な方には、広い面をやわらかく温める方法もご用意しています。



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