のどに何かが引っかかる。飲み込めないわけではないのに、いつも詰まっている感じがする。
耳鼻咽喉科で診てもらっても「異常はありません」と言われた。逆流性食道炎と言われて薬を飲んでも、のどの感じだけが残っている——。
当院でこの訴えを聞くことは、めずらしくありません。とくに多いのが、人と話す仕事をしていて、ストレスを抱え続けている方です。
この記事では、検査で異常が見つからないのどの違和感について、東洋医学ではどう考え、鍼灸で何をするのかをまとめます。
のどの違和感が続くとき、まず耳鼻咽喉科で確認を
はじめにお伝えします。のどのつまり感には、医療機関で調べたほうがよい原因がいくつもあります。鍼灸は、その確認が済んでからの選択肢です。
次のような場合は、鍼灸より先に受診してください。
- 飲み込みにくさが日ごとに強くなる
- 食べ物が実際につかえる、体重が減ってきた
- 血の混じった痰が出る
- 声のかすれが2週間以上続く
- 首にしこりが触れる、発熱がある
- 胸やけや、酸っぱいものが上がってくる感じを伴う
※これは受診の目安であり、診断ではありません。判断は医師にゆだねてください。
「異常なし」と言われたのに、感じだけが残る
内視鏡でのどを見ても、炎症や腫れが見つからないことがあります。それでも本人の感じは消えません。
このとき困るのは、「異常なし」と言われたことで、相談する場所がなくなってしまうことです。気のせいではないのに、説明がつかない。この状態で来られる方が多くいらっしゃいます。
東洋医学では「梅核気(ばいかくき/ばいかっき)」と呼びます
東洋医学には、この訴えを指す古い言葉があります。梅核気——梅の種がのどにある感じ、という意味です。
名前がついているということは、同じ訴えが昔から繰り返し記録されてきたということです。珍しい状態でも、気のせいでもありません。
東洋医学では、これを気(き)のめぐりが滞った状態としてとらえます。のどそのものの病変ではなく、張りつめた状態が続いたときに、のどに現れるという考え方です。
ストレスを抱えた営業職の方に、とくに多い訴えです
当院でこの訴えを聞くのは、営業職の女性が目立ちます。共通しているのは、ストレスを抱え続けていることです。
- 一日じゅう人と話し、声を使う
- 気を抜けない時間が長い
- 食事の時間が不規則になりやすい
「詰まる」「引っかかる」——患者さんが使う言葉も、ほとんど同じです。
当院がのどではなく、あばらのふちを診る理由
当院では、のどのつまりを訴える方に、のどだけを診ることはありません。
最初に確かめるのは、あばらのふち(肋骨弓のアーチ)です。東洋医学の腹診では、この部分の張りや抵抗を胸脇苦満(きょうきょうくまん)と呼びます。
確かめているのは、押すと痛みがあるか、張っているかです。のどを訴えて来られた方でも、ここに反応が出ていることは少なくありません。
胸脇苦満は、腹診で古くから記録されてきた所見です。のどの感じは本人にしか分かりませんが、あばらのふちの張りは、触れば確かめられます。当院が施術の前後で追いかけているのは、こちらの変化です。
使うツボ
ストレス:印堂、巨闕、中かん、関元、章門、内関
その方の状態によって組み立ては変わりますが、のどのつらさが強いときによく使うのが次のツボです。
- 尺沢(しゃくたく) — ひじの内側
- 太淵(たいえん) — 手首の親指側
- 少商(しょうしょう) — 親指の爪の際
- 商陽(しょうよう) — 人差し指の爪の際
そして当院がよく使うのが、足の親指の付け根にすえるお灸です。この場所は「のどけの灸」と呼ばれ、のどの違和感に用いられてきました。
のどの訴えに足の親指を使う——意外に思われます。ですが東洋医学には、離れた場所からのどへ働きかける組み立てが古くからあります。当院はここにお灸を使います。
逆流性食道炎と言われたのに、のどの感じが残るとき
胸やけや、みぞおちからこみ上げる感じを伴う方もいらっしゃいます。薬で胸やけは落ち着いたのに、のどの違和感だけが残るという相談もよくあります。
あばらのふちの真下は、胃のある場所です。のどと胃は一本の管でつながっていて、東洋医学でも別々のものとしては扱いません。
当院が「繰り返す不調は胃腸から」とお伝えしているのは、こうした場面にもあてはまります。詳しくは繰り返す肩こり・腰痛と胃腸の関係をご覧ください。
夜になると咳が出る、こみ上げる感じを伴うという方には、夜に止まらない咳と鍼灸もあわせてどうぞ。
今日からできること|うがいは「水」で十分
のどが気になると、うがい薬を使わなければと思いがちです。ですが研究では、水うがいのほうが良い結果が出ています。
京都大学が387人を「水うがい」「ヨード液うがい」「うがいをしない」の3群に分けて2か月追跡した無作為化比較試験では、風邪の発症は次のようになりました。
- 水うがい:しない群と比べて約40%少なかった
- ヨード液うがい:12%の低下にとどまり、統計的に意味のある差は認められなかった
ヨード液が、のどの常在菌のバランスや粘膜に影響する可能性が指摘されています。
うがい薬を使う場合は、メーカーの案内どおりの手順が確実です。イソジンの公式サイトでは、①ぶくぶくうがいで口の中をすすぐ → ②上を向いて15秒ガラガラ → ③もう一度15秒ガラガラと案内されています。
のどの違和感が続いているときに、強いうがい薬を何度も使う必要はありません。水で、回数を分けて。これで十分です。
鍼が初めての方へ
のどの訴えでいらっしゃる方から、「のどに鍼を刺されるのでは」と心配されることがあります。
当院がこの訴えで最初に触れるのは、あばらのふちとお腹です。使うのは手足のツボと、足の親指へのお灸。のどそのものに何かをする施術ではありません。
気の張った状態が続いている方ほど、まず息が深く入るところからです。
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〔参考〕京都大学「水うがいで風邪発症が4割減少」/イソジン公式サイト




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