今日は腰、次に来たときは太もも、その次は膝。スポーツをしているお子さんが、来るたびに違う場所の不調を訴える——これは決して珍しいことではありません。当院でもよくみられます。
部活の疲れが抜けない高校生の生活
症状:全身の疲労感、部位を変えて出る筋肉痛
- 10代・男子高校生(運動部)
- 週4日は部活の練習、週2日は自主的な筋トレ。実質、週6日体を動かしている
- 試験やレポートが重なる時期は、睡眠時間が削られる
- 朝は5時起きの日もある
- 来院のたびに、痛みや張りの出ている場所が変わる
「10代は回復が早い」とよく言われます。実際そのとおりなのですが、回復が早いことと、消耗していないことは別です。この方の場合、体を動かす量に対して、休む時間が構造的に足りていませんでした。
痛む場所が毎回変わるのは、めずらしくない
ふくらはぎ、腕、太ももの前、内ももと、施術のたびに主訴が移動していきました。
保護者の方からすると「あちこち痛がるけれど、どこか悪いのでは」と心配になるところですが、体を動かしている10代では、よくみられる出方です。
今回のケースでは、理由は2つあると考えています。
ひとつは、成長期の体そのものが変わり続けていること。骨が伸びる時期は、それに引っぱられる筋肉の緊張も日々変わります。先月と同じ体ではないので、負担のかかる場所も動きます。
もうひとつは、部内での役割が変わったこと。同じ競技でもポジションが変われば、使う動きも変わります。この方も担当が変わった時期に、それまで張ったことのない場所が硬くなりました。
つまり「弱い場所が繰り返し痛む」のではなく、「その時期に一番使った場所が痛む」という出方をしています。場所が移ること自体は、心配の材料にはなりません。
東洋医学からみた見立て
夜更かしが続いた時期に、脈をみると肝のはたらきの弱さが目立ちました。
東洋医学では、肝は「筋(きん)」をつかさどると考えます。また、体を休めているあいだに血をたくわえ、動くときに全身へ配る役割があるとされます。眠る時間が削られると、この「たくわえて配る」はたらきが追いつかなくなる、というのが東洋医学の見方です。
筋肉痛が長引く、疲れが翌日に残る、という状態は、使いすぎだけでなく回復の側が間に合っていないサインとして捉えています。
※これは東洋医学の考え方に基づく当院の見立てであり、睡眠不足が症状の原因であると特定したものではありません。
施術内容|その日の体を見て決める
毎回同じ場所に同じ施術をする、という組み立てにはしませんでした。
- まず全身の状態と脈をみて、その日いちばん張っている場所を確認する
- 細い鍼で全身を整えたうえで、当日の主訴に合わせて手を加える
- 張りの強い部位にはパルス、疲労が抜けにくい時期には背中や腰にお灸
- 鍼に慣れてからは、刺激量を少しずつ調整
刺激が強すぎると、翌日にだるさが強く出ることがあります。一般に、お子さんや高齢の方は弱めの刺激で十分とされますが、実際には体質や個人差が大きく、その方に合う量を見ながら決めていきます。この方は、弱めが合うタイプでした。
繰り返さないための視点|土台は睡眠と食事
この方に一貫してお伝えしてきたのは、「動いた分は、寝ないと戻らない」ということでした。
部活を減らすのは本人の意思と反します。試験もなくなりません。すると、まっさきに削られてしまう睡眠時間。人によっては朝食もとらなくなってしまいがち。
成長期は、体をつくる材料の需要がふだんより多い時期でもあります。運動量に対して、食べたものを体に変えるはたらきが追いついているか——この視点は、大人の慢性症状にも共通します。詳しくは 繰り返す肩こり・腰痛と胃腸の関係 をご覧ください。
お子さんがスポーツをしているご家庭へ
成長期の痛みには、成長期特有の状態が隠れていることがあります。
- 特定の場所を押すと必ず痛む、腫れや熱を持っている
- 運動をやめても痛みが引かない
- 片側だけ、日に日に強くなっている
こうした場合は、まず整形外科でご相談ください。骨が成長している時期は、大人とは異なる評価が必要になることがあります。
そのうえで「検査では問題ない」「使いすぎでしょう」と言われた疲労や張りに対して、鍼灸がお役に立てる場面があります。痛くなってから対処するより、動き続ける時期を支えるという使い方のほうが、10代には合っていると感じています。
整骨院での勤務時代、慢性的な関節炎に悩むお子さんがいました。しかし、夏休みなどで部活が休みの週はまったく痛みがでませんでした。
これは運動のしすぎによる「オーバーユーズ(使いすぎ)」が原因です。
スポーツをやっているお子さんは、練習後に痛みがでやすい場所を軽く冷やしたり、ほぐしたりするだけでも予防になります。ぜひご家庭でも、少しだけ手を入れてケアしてあげてくださいね!あと睡眠!!
あわせて読みたい
「痛くなってから治す」のではなく、続けるためのケアという考え方については、こちらでもご紹介しています。
週末バスケを3年続ける30代男性の「維持するケア」




コメント