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歯科治療のあと口が開けづらい|インプラント・抜歯後に残る顎のこわばりと鍼灸【鍼灸師監修】

歯科でインプラントを入れた。親知らずを抜いた。被せ物のために、長い時間口を開けたままだった。その数日後から口が開けづらい、顎のあたりが張って腫れぼったい、片側だけ強張る——そういう状態で来られる方がいます。

治療した歯そのものは痛くない。歯科では「処置の経過は問題ない」と言われている。それでも口が開かない。指が2本入るかどうか、という開き方になっていることもあります。

まず、歯科で確認してください

最初にはっきりさせておきます。歯科治療のあとの腫れや痛みは、まず治療を受けた歯科で診てもらうことが先です。

  • 腫れが日ごとに強くなっている
  • 熱を持っている、発熱がある
  • 膿のような味やにおいがある
  • 唇や舌にしびれがある
  • 治療した部分そのものがズキズキ痛む

こうした場合は、処置後の感染や神経への影響が関係していることがあります。鍼灸で扱う話ではありません。担当の歯科へ連絡してください。

以下に書くのは、歯科で「処置自体に問題はない」と確認がとれていて、それでも顎の動きが戻らないときの話です。

痛んでいるのは歯ではなく、顎の筋肉かもしれません

歯科の治療中、口はずっと開いたままです。20分、30分と、自分では意識しないまま最大近くまで開き続けている。

口を開ける動作も閉じる動作も、顎の関節そのものではなくまわりの筋肉が担っています。中心になるのは、頬のあたりにある咬筋と、こめかみから広がる側頭筋。長い時間開けたままでいると、これらは引き伸ばされた状態で疲れます。

さらにインプラントのような処置のあとは、その周囲に一時的な腫れが出ます。腫れがあると、体は無意識にその側をかばいます。反対側だけで噛む。すると今度は、反対側の筋肉が使われすぎる。

当院が顎の動きをみるときに探しているのは、この「処置のあとに残った、筋肉側の問題」です。頬骨の下、耳のすぐ前あたり(下関というツボの周辺)を押すと、硬いしこりのように触れることがあります。

顎だけをみても戻りにくい理由

顎の開け閉めは、顎だけで完結していません。

頭の位置が前に出ていると、頸椎の左右どちらかの歪みと、下顎は後ろへ引かれます。肩が内側に巻いていると、首の前側が縮みます。この状態で口を開けようとしても、顎はスムーズに動けません。

歯科治療のあとに顎が開かないと訴えて来られる方に、もともと首の疲れや手のしびれ、巻き肩を抱えていた方は少なくありません。処置がきっかけで表に出ただけで、土台は前からあったという状態です。

そのため当院では、顎まわりだけでなく、首、肩甲骨の内側、背中まで含めて組み立てます。肩甲骨が動くようになると顎の開き方が変わる、ということは実際によくあります。

東洋医学からみた顎と、食べること

顎のまわりには、胃の経絡(足陽明胃経)が通っています。顎の施術でよく使う下関や頬車は、胃経のツボです。東洋医学が顎と消化を同じ流れの上でとらえてきた、ということでもあります。

実際、口が開けづらい期間は食べられるものが限られます。柔らかいもの、噛まなくていいもの、片側だけで噛めるもの。それが数日から数週間続けば、胃腸には確実に負担がかかります。噛む回数が減れば消化の最初の一段が抜けますし、片側だけで噛む癖はそのあとも残ります。

顎の話をしているようで、食事と胃腸の話でもある。当院が体質や胃腸の状態まで含めてみているのは、こうしたつながりがあるためです。

顔に鍼を打ちたくない方へ

顔への鍼に抵抗のある方は多いです。まして歯科処置の直後は、その部分を触られること自体が不安だと思います。

当院では、顔に鍼を使わない組み立てもできます。

  • 耳の下から顎の下、舌の下へと続くライン(耳下腺・顎下腺・舌下腺のあたり)を、手技でゆっくりほぐしていく方法
  • 顎そのものではなく、首・肩・肩甲骨の内側から入って、顎が動きやすい状態をつくる方法
  • 軽く抵抗をかけながら、口を開け閉めしてもらう運動

顔に鍼を使う場合も、下関・上関・顴髎(けんりょう)といったツボへ細い鍼を用います。刺激の量はその場で相談しながら決めますので、苦手な方は遠慮なくお伝えください。

この時期にやらないほうがいいこと

  • 無理に大きく開ける練習。引き伸ばされて疲れている筋肉を、さらに伸ばすことになります
  • 硬いものを食べて慣らそうとすること
  • 腫れているうちに強く揉む、強く温めること。熱を持っているときは特に避けてください

反対に、腫れが引いたあとに蒸しタオルなどで顎まわりを温めるのは悪くありません。判断がつかないときは、歯科で腫れの状態を確認してから決めてください。

繰り返さないための視点

片側だけで噛む癖、食いしばり、頭が前に出た姿勢。歯科治療はあくまで「きっかけ」で、戻りにくさをつくっているのは、こうした日常の積み重ねであることがほとんどです。

処置のあとに顎が動くようになっても、同じ噛み方と同じ姿勢に戻れば、また同じところが張ってきます。

東洋医学では、噛む・食べる・消化するを一続きのものとしてみます。胃腸の状態が整っていると、体は余計な緊張を抱え込みにくくなります。顎の話から胃腸へ橋を渡すのは遠回りに見えますが、繰り返さないためには、ここが土台になります。

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廣木 孝志

廣木 孝志

2022年11月、恵比寿で個室鍼灸院を開業/痛みの緩和、全身調整が得意/セルフケア提案とコンディショニングを大切にしています。

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