患者プロフィール
20代男性・デスクワーク中心の会社員。鍼灸は初めてとのことでした。
主訴と経過
幼少期から鼻で呼吸がしづらい状態が続いており、1か月前に鼻中隔湾曲症の手術を受けられました。その後からにおいを感じにくくなり、来院時は「鼻に近づければ微かに分かる程度」という状態です。
執刀医からは「術後のかさぶたなどによるもので、3か月ほどかけて徐々に戻っていく」と説明を受けているとのことでした。
術後の経過は、まず手術を受けた医療機関の管理下にあります。当院ではその説明を前提に、体の側からできることに限って施術を行いました。においを感じない状態が続く場合や、ほかの症状をともなう場合は、耳鼻咽喉科での再評価を優先してください。
当院の見立て
首(頚椎)を確認すると、第1・第2頸椎のあたりに詰まった感じと圧痛があり、胸鎖乳突筋が硬くなっていました。ここには頸動脈、鼻に栄養を送る通り道、また耳の裏(翳風穴)には顔面へ向かう神経の通り道があります。
東洋医学では、鼻は肺と関わりの深い器官と考えます。肺経は腕の付け根(中府、雲門)、肘回り、親指のラインに繋がります。
今回は首まわりの緊張によって、顔や鼻へ向かう巡りが滞りやすい状態にあるとみました。
※これは東洋医学の考え方に基づく当院の見立てであり、嗅覚が低下した原因を特定したものではありません。
施術内容
- 全身の調整に1番鍼、翳風(えいふう)・角孫(かくそん)には3番鍼
- 迎香(げいこう/小鼻の脇)には細い鍼を使用
- 印堂(いんどう)・上星(じょうせい)・百会(ひゃくえ)。東洋医学でいう「清竅(せいきょう)を開く」ねらいで
- 目の下から頬にかけて赤外線とお灸で、顔まわりの巡りをよくする
- 緊張の要素に対して内関、腹部、下腿
- 肺経を単鍼でアプローチ
- うつ伏せで天柱から大椎にかけて、背骨まわりの硬い部位に置鍼。天柱に多壮灸、首と背中にお灸
三角筋から肘の内側にかけても、強い張りがみられました。
経過
施術前は、芳香オイルを鼻に近づけてようやく分かる程度でした。施術の途中、体位を変えるときに同じオイルをお渡ししたところ、離した距離でにおいを感じられ、ご本人が驚かれていました。施術後には「ルイボスティーの香りが鼻の奥に感じられる」とのお話でした。ちなみに味は分かりますか?との問いに「桃味!」と正解を答えてくれました。
ただし、術後3か月かけて回復していくと説明を受けている時期と重なっています。この変化を鍼灸によるものと切り分けることはできません。今後の経過を見ていきます。
セルフケア
首まわりをゆるめること、胸を開く、肩甲骨を下げた位置を意識すること、お腹を温めること。この3つをお伝えしました。

あわせて、においを意識して嗅ぎ分ける「嗅覚トレーニング」も、嗅覚の回復期によく用いられる方法です。やり方はコロナ後遺症のケアの記事内で紹介しています。
繰り返さないための視点
首の硬さは、ご本人に自覚のないまま長く続いていたものでした。画面に向かう時間が長いと頭が前に出た位置で固定され、首は前も後ろも休まる時間がありません。今回お腹を温めるようお伝えしたのは、顔まわりの巡りを支えているのが体の内側の温かさだと考えているためです。首だけをゆるめても戻ってしまう方には、こちらから整える視点が要ります。
あわせて読みたい
同じ嗅覚の症状でも、感染のあとに続いている場合は見立てもアプローチも変わります。その場合は下の記事をご覧ください。




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